飼い犬税と行動経済学のお話。超簡単解説。タイトルの割に軽い内容。


このたび、泉佐野市があまりに飼い犬のフンを放置する飼い主が多く、フン処理が問題化しているため、犬を飼っている人々に税金を課すことを検討しているらしい。


そもそも、泉佐野市では犬の糞を放置すると罰金を取るってことにしてる(啓発が目的で徴収例はまだない)わけだけど、本格運用する際にあまり金額を見誤ると、逆にフンの放置が増える可能性がある。

同様に飼い犬税も慎重に値付けをしないとフンの放置が増える。


どういうことかと言えば、犬の糞を持ち帰るという道徳的インセンティブを、罰金という経済的インセンティブに置き換えてしまうことが起こりうるということ。
つまり、今までは罪悪感や常識という名の道徳的インセンティブを持って犬の糞を持ち帰っていた人に、『バレた時に罰金さえ払えばフンを放置する免罪符を得ることができる』という経済的なインセンティブを与えてしまう。

このことは、かつてアメリカで親のお迎えの遅刻に困った保育園が、遅刻者に罰金3ドルを科すようにしたら、罰金を科す前よりも遅刻が増えてしまって、その後、罰金制度を廃止したにも関わらず遅刻者の数は以前の水準に戻らなかったという実験によって実証された。


この時は、たった3ドルの追加料金で遅刻しても文句を言われないっていう選択肢を親に与えてしまったのが遅刻者が増えた原因で、一度道徳的インセンティブを経済的インセンティブに置き換えてしまったが為に、罰金廃止以降、親から道徳的インセンティブが復活することもなかったという話。


おさらいすると、罰金というのは、金額を見誤ると対象に免罪符を与えてしまうだけになる。この場合は罰金が安すぎる場合に起こりやすい。

逆に飼い犬税は、ペットを飼っている人全員に課されるものであるので、あまり値段を上げすぎると『高い金額を払っているのだから、フンを放置してもいいはずだ』と思わせてしまう可能性がある。


だから、実はこの手の課税、罰金は非常に難しい。


そんなお話。


経済学の中で一番面白いのって行動経済学だと思うんだよなー。全ての行動はインセンティブによって決定される!って奴。